頭では分かっているのに、なぜ過食嘔吐が止まらないの?

脱!摂食障害カウンセラーの三上さくらです。

この記事は、摂食障害の中でも過食嘔吐で苦しんでいる方のために書いています。

なぜ過食嘔吐してしまうのか?

摂食障害中の自分の思考を探って、過食嘔吐している現実を少しずつ変えることができるワークをご用意しました。最後まで読んでいただけると幸いです。

 

はじめはダイエットだったのに…
食べて吐いたらリセットされた気分を味わえて嬉しい!
いつでも止められるから、これからも吐いてしまおう!

そんな軽い気持ちでスタートした過食嘔吐。

もう何年も経って、そろそろ止めたほうがいいかもしれない…と気付き始めたのに、摂食障害行動が止まらない…どうしよう…

そんな不安を抱えている方へ。

はじめに

過食嘔吐している自分はだ。
頭では分かっている。

食材の費用が大変なことになっている。そろそろ止めたほうがいい。このままでは貯金がなくなる。いつか万引きしてしまうかもしれない。なんとかしないと!
頭では分かっている。

夜に過食嘔吐しているから、睡眠時間が足りない。しっかり寝たい。朝起きるのが辛い。早く寝たほうが身体にとっても楽に決まっている。
頭では分かっている。

仕事に行っても過食したい衝動に駆られている。仕事に集中できない。パフォーマンスが下がるのに。いいことなんて何もないのに。
頭では分かっている。

学校や仕事に行けないくらい過食嘔吐に体力を使い果たしている。もう止めたい。普通の食生活をしたい。3食きちんと食べて、健康的な生活を送りたい!
頭では分かっている。

そんな状態になっていませんか?

 

15年間ずっと、私もそんな状態でした。

頭では分かっているのに、どうして過食したいの?どうして吐くの?どうして過食スイッチが入るの?私はなんて愚かなんだろう…もう生きることが苦しい…死ねば解放されるのかな?

毎日こんな葛藤をしていました。

理想と現実のギャップ

摂食障害中の私は、普通の食生活が分からなくなっていました。

私の理想的な食生活とは、三食きちんと食べる。栄養バランスを考える。野菜やフルーツを多めに摂取する。炭水化物もたんぱく質も食べる。良質な油を使う。体を冷やす食材は避ける。アルコールよりもハーブティー。カフェインの取り過ぎに注意!砂糖もなるべく取らない!など、たくさんの項目がありました。

でも、現実は全く違っていたのです。

朝のギャップ

早起きして、朝ごはんをしっかり食べる。ご飯と味噌汁、納豆、漬物など。旅館の朝ごはんみたいに素敵なイメージで。たまには食べない日があってもいいけど、朝ごはんは大切!しっかりエネルギーを吸収して、午前中はしっかり働くぞ!といつも思っていました。

でも、現実は違いました。

深夜まで過食嘔吐していたので、朝はギリギリに起きて、浮腫んだ顔を何とか化粧で誤魔化して、慌てて家を飛び出す。電車には乗れたけど、貧血気味で調子が悪い。でも朝ごはんは食べてないからカロリー消費できたことのほうが嬉しい。これが現実。

会社でのギャップ

仕事中はブラックコーヒーばかり。目が覚める気がするし、カロリーゼロで安心して飲めました。仕事に集中すれば何とかなる。集中が切れると「お昼は何を食べようか」ということばかり考えてしまう。

お昼休憩になると、やっぱり「お昼を抜いて夜だけしっかり食べようか」と考え直し、ゼロコーラだけ。たまにソイジョイを食べたりもしたけど、会社で過食スイッチが入ると大変なことになるから我慢する。

本当は職場の仲間とランチに行ったり、手作りのお弁当を食べたり、天気のいい日は公園で食べたりしたい。

だけど、誰かと食べるのが怖い。

だから一人でランチ時間を過ごすことが多くなりました。たまにランチ会とかあると苦痛でたまらない。食べたくないのに食べなきゃいけない。夜は絶食しないと!と心に誓って、その場は仕方なく食べることにする。そんな日は就業時間までイライラとの闘い。トイレで吐くこともある。でも吐くには足りないから、やっぱり過食したくなる。こんな負のスパイラルにハマっていきました。

夜時間のギャップ

夜は飲み会に参加したり、素敵な男性とディナーしたり、女子会とかやってみたかった。

現実は、朝も昼も食べていないから急いで最寄り駅まで帰って、近所のスーパーへ。半額惣菜と割引の菓子パンを購入して、一人暮らしの家へ帰る。そして、掃除・洗濯・シャワーを済ませて、あとは寝るだけの状態になってから…

思う存分、過食をはじめる。

動画サイトを見ながら一時間くらいひたすら過食。途中の水分補給はたっぷり。スーパーで買ったものが無くなって、さて、吐くか。

トイレに行って、喉に指を突っ込んで、完吐きを目指す。喉から血が出て、胃酸が出て、涙が出て、はい終了。全部吐けたはず。この安心感疲労感に浸って、自分を責める前に眠る。

そう、眠れた日はまだいい。

中途半端な時間だと、2ラウンド目に突入する。スーパーで、より安くなった惣菜と食パンを買ってきて、同じことを繰り返す。ドロドロに疲れて、罪悪感でいっぱになりながら横になる。

布団の中で、どうしてこんなことをしているのだろう…と泣きながら眠る日々。抜け出せない地獄。永遠の闇を彷徨っている気分でした。

摂食障害思考を知る

私は過食嘔吐は悪いことだと、頭では理解していました。

過食してしまうことは良くない行動だ。嘔吐するなんてとんでもない!ちゃんと食べないと不健康だ。世の中には餓死する人もいるのに、私はなんて無駄なことをしているんだろう。そして、過食嘔吐している時間もお金ももったいない!という意識が常にありました。

それでも過食嘔吐してしまう。

そんな自分に罪悪感がいっぱいでした。

 

そこで考えました。

正常な判断ができるのに、どうして私は異常な行動をしてしまうのだろう?ひたすら考えました。そして、私は摂食障害思考に気が付くのです。

摂食障害思考とは

・食べたら太る
・食べたら吐け
・太ったら恐ろしい
・太るなんて許せない
・痩せなければ意味がない
・細くなければ生きる価値がない

と、私に囁いてくる悪魔のような存在です。

 

頭では分かっている。

 

この頭とは、私の中の健康的な思考だったのです。

健康的な思考とは

この健康的な思考を、私は健全思考と呼んでいます。

・食べることは生きること
・食べることは健康・元気になる
・食べることは楽しい
・美味しいものは私を喜ばせる
・楽しい食事は心も満たされる

と、食に対してポジティブな考えを持っている自分です。

 

なぜ今まで頭では分かっているのに、相反する言葉が浮かぶのだろう?と疑問に思っていたのですが、これで解決しました。

 

私の中には摂食障害思考が存在している。厄介なことに、とても強く成長している。最悪なことに、摂食障害思考に支配されている時間が長い、ということに気付いたのです。

2つの思考を擬人化してみる

私は摂食障害思考を見つけやすくするために、名前を付けることにしました。

私の中には、真面目で頑張り屋さんのさくらちゃん摂食障害を引き起こすG子ちゃんがいました。

※「G子ちゃん」の名前の由来をよく聞かれるのですが…

私は過食嘔吐行動を「GR(ジーアール)」と表現していました。ちょっと暗号や秘密プロジェクトみたいでカッコいいかなぁ〜と思って。ただし「GR」とは、ゲロ(GERO)の略です。汚くてすみません。。「過食嘔吐」という言葉自体に嫌悪感があり、日記などを書く度にイライラしてしまう、そもそも画数が多い、もし誰かに見つかった時にバレたくない、という思いから「GR」としました。そして「GR」をしてしまう「G子ちゃん」が生まれたのです。

2つの思考の声を聞く

「お友達が過食嘔吐で苦しんでいたら、なんて声をかけますか?」という質問に対して、「大丈夫?しっかり食べて、早く元気になってね。」と声をかけるのはさくらちゃんの言葉です。

さくらちゃんは健全思考なので、

・お友達に優しい言葉をかけてあげられる
・「食べること」は大切であると知っている
・過食嘔吐を繰り返すことは異常だと分かっている

一方、摂食障害思考のG子ちゃんは

・太ったら男子にいじめられるよ
・痩せるために、食べたら吐かないと!
・カロリーを見ておかないと後悔するよ
・ストレスでイライラしたら過食したら?
・痩せないと生きている意味がないよ

と、ネガティブな言葉を語りかけてきます。

 

どちらも私の中の一部です。

 

摂食障害中の私は、あまりにもG子ちゃんが強すぎて、さくらちゃんの声が聞こえませんでした。

 

こんな感覚ありませんか?

自分の中にある健全思考を強めることによって、摂食障害は改善していきます。それには、この概念を理解しなければなりません。

健全思考を伸ばしてあげる

過食嘔吐って、Gちゃんを喜ばせる行為なんです。

 

だから、さくらちゃんを伸ばしてあげることは何だろう?と考えてみました。さくらちゃんは弱っている、自信をなくしている、何とかしてさくらちゃんを励まそう!と思いました。

そして私は、さくらちゃんを喜ばせるためのアファメーションをはじめました。アファメーションとは自分に対してポジティブな言葉をかけてあげることです。

実際に私がやっていたアファメーションは、

・さくらちゃんは頑張ってる!
・大丈夫だよ〜ちゃんと治るよ〜
・凄いね!偉いね!信じてるよ!

こんな感じです。さらに、

・食べることは、健康になること!
・食べることが、楽しみに変わる日が必ず来る!
・摂食障害を克服した人がいる!!
・私にもちゃんと食べられる日が来るよ
・私は食から完全に解放される!

これらの言葉を毎日毎日自分にすり込んでいきました。自分自身を洗脳するイメージです。

 

馬鹿らしいですか?

 

そんなのことで治ったら苦労しない!

当時の私もそう思っていました。でも、無料で1分もかかりません。コレで治ったら儲けもん!嘘だと思ってもやったもん勝ち!そんな気楽な精神でやっていました。いえ、藁にもすがる想いでした。

思考を書き出す

さらに、自分が考えていることをノートに書き出していました。

克服した今となっては、手書きの言語化が改善への近道だったと思います。(私のクライアントさんには必ずマイノートを用意してもらっています!)

 

はじめは日記を書こうと思ったのです。でも、摂食障害行動に対する後悔反省ばかり。昨日と同じ内容を書いて、読み返しては気持ちが重くなっていく。症状は改善するどころか悪化している。そんな自分をますます追い込んでしまいました。

「もう吐きたくない…」

自分で書いた言葉を声に出してみました。

「もう治らないのかも…」

涙が溢れてきて、ノートにポタポタ落ちました。鼻水も垂れました。紙がウネウネしてきて、もうどうでも良くなってきました。

 

私は、キレイに日記をつけたい人間でした。完璧主義とも言います。

一度脳内で整理してから、きちんとした文法で、正しい漢字で。学生時代のノートも丁寧に書いていたし、気に入らない部分があると破いたり、ノートを買い直したりすることもあります。

今、目の前にあるウネウネのノートに、思っていることを書き殴ってみました。もうグチャグチャで読み返すこともできないと思います。それでも心の中を全て吐き出すように書きました。いつも食べ物を吐いている時のように。

そして、ノートがいっぱいになる頃、手が痛くなって、気が付いたのです。

 

ネガティブな言葉の全てが、摂食障害思考のG子ちゃんの言葉だということに。

自問自答してみる

私は赤ペンに持ち替えて、書き殴った言葉に健全的な言葉を書いていきました。

「もう吐きたくない…」
そうだね。辛いよね。苦しいよね。私も吐きたくないよ。

「もう治らないのかも…」
ちゃんと治るよ。摂食障害は不治の病じゃないよ。治っている人もたくさんいるよ。

「過食嘔吐は趣味だ」
本当は違うよね。趣味だと思ってないと心が潰れそうだよね。趣味って、もっと楽しいことだよね。一時的なすっきり感じゃなくて、もっと素敵なことだよね。

「彼氏なんてできない」
きっと出来るよ。大丈夫。見た目じゃなくて内面を好きになってくれる人が現れるよ。

「一人で死んでいくんだ」
一人は怖いよね。拒食症で死ぬ人もいるから怖くてたまらないよね。これからきっと彼氏ができて、幸せな結婚ができるよ。

「自分はいらない人間だ」
この世にいらない人間なんていないよ。この世に生まれただけでも奇跡なんだよ。選ばれた人間なんだよ。

「自分は最低な人間だ」
そんなことないよ。過食嘔吐しているだけで、他は頑張ってるじゃん。どうして認めてあげないの?

「生きている意味なんてない」
ほんとは生きたいんだよね。だから葛藤してるんだよね。ほんとは素敵な未来を夢見てるんだよね。

「でも、ほんとは治りたい」
うん、知ってる。私も治したいよ。

 

この対話をしながら、私は号泣しました。

そして、私の中の健全思考はまだ生きていた!ということに気付きました。

 

ワークのお願い

この記事を読んでいる方にお願いです。

この対話をご自分でやってみてください。健全思考の言葉のポイントは「お友達が過食嘔吐で苦しんでいたら、なんて声をかけますか?」と考えてみることです。

さいごに

頭では分かっている。

頭とは、健全思考のことです。

摂食障害思考の自分は、過食嘔吐することが全てなので、あなたに過食嘔吐させるための言葉ばかりを囁いてきます。

もう何年も言いなりでしたよね。

だから、すぐには過食嘔吐が止まらないかもしれません。でも、そこで諦めてしまうと、摂食障害思考の思うツボです。

 

ちなみに、私はノートに書き殴った日も過食嘔吐しました。しかし、私は自分のことを少しだけ知ることができました。

あなたの心の底のモヤモヤした感情を言語化してみてください。理想と現実のギャップに気付いたり、実は意外なことにこだわっているかもしれません。

そして、ネガティブな言葉健全思考でフォローしてみてください。

あなたの中の健全思考は弱っていますが、ちゃんと働いていますよ。だって、私のブログを読んでいるのですから。