摂食障害と合併症

脱!摂食障害カウンセラー 三上さくらです。

摂食障害は、拒食症も過食症(過食嘔吐)も多くの合併症を引き起こします。私も摂食障害の症状以外に多くの合併症に悩まされました。脳機能低下、偏頭痛、うつ、自律神経失調症、不安神経症、パニック障害、アルコール依存症、不眠症、薄毛、むくみ、低体温、低血圧、貧血、吐きダコ、逆流性食道炎、胃痛、月経不順、無月経、便秘など、全てが摂食障害のせいではないかもしれません。しかしながら、摂食障害を克服した今、多くの症状から解放されています。

ここでご紹介するのは、多くの方が共通する症状です。摂食障害を改善することにより、だんだんと症状が和らぎますので、どうぞ深刻になり過ぎないでください。ただし、あまりにも症状が改善しない場合は専門の医療機関への受診をおすすめいたします。

私は、摂食障害では病院に行けませんでしたが、婦人科と精神科へは行ったことがあります。あまりにも生理不順でイライラが止まらない時はピル治療をしましたし、精神科では不安神経症とパニック障害と診断され薬を飲んでいたこともあります。どうか自分の体を大切にしてください。

拒食や過食嘔吐の場合、慢性的な栄養不足で脳が萎縮してしまいます。認知機能が低下して、正しい判断ができなくなります。脳が正常に働いていない状態なので、忘れっぽくなり記憶することが難しくなるのです。

拒食症のクライアントさんは、何度も何度も同じことを質問する傾向があります。あらゆる本を読んだり、熱心に情報収集をしていたようですが、すぐに忘れてしまいます。どんなに思考を変えようと努力しても、脳が正常に働かないと意味がありません。

摂食障害になる方の共通点は、もともとの性格が真面目で、正義感が強く、さらに完璧主義の方が多いです。その性格のせいで、食事をコントロールがきかないことが恥ずかしく、自分に対して激しい自己嫌悪を抱いています。自分に厳しすぎるので、心がどんどん疲弊して、心の病が悪化してしまいます。

うつ病

気分障害の一つで、抑うつ気分、意欲や興味の低下、不眠、悲しみ・不安が継続するなどの症状があります。私の場合、情緒不安定感情の起伏が激しいだけだと思っていました。気分が良い時は何でもないことが、いったん気持ちが落ち込むと消えてしまいたい衝動に駆られました。「生きていることが辛い」「もう死んでしまいたい」という気持ちが強くなり、自殺願望もありました。精神科でもらった抗うつ剤を服用していましたが、副作用で気がおかしくなりそうでした。摂食障害の症状と連動していたので、食事をコントロールできるようになると、いつの間にか鬱の症状も軽くなっていました。

自律神経失調症

交感神経副交感神経のバランスが乱れると自律神経失調症になります。交感神経は体や脳を働かす神経で、副交感神経は体を休ませて回復させる神経です。摂食障害中の私は、常に交感神経が敏感になり、リラックスできる状態ではありませんでした。冷や汗が出たり、過呼吸で倒れたり、被害妄想も自律神経が問題だったのかもしれません。こちらも摂食障害と連動していました。ですので、過食嘔吐の回数が減ってくると、徐々に症状が落ち着いていきました。

不安神経症

強い不安や恐怖感が特徴です。私の場合は、人混みや電車の中でパニック発作が起こり、交番や駅で休ませてもらっていました。「何か悪いことが起きるのではないか?」という気持ちが常にあって、外出することが怖くてたまりません。車や電車に乗ることができなくなったので、仕事は休職しました。たまに外出をするのですが、過食用食材を買いに行くため。こんな生活をしている愚かな自分が、他人からどんな目で見られているのか不安で、より症状を悪化させたのかもしれません。

依存症

病院で診断されたわけではありませんが、私はおそらくアルコール依存症でした。朝起きて、過食嘔吐するくらいなら酔っ払って寝てしまったほうがいい!と毎日のようにお酒を飲んでいました。最終的には泡盛の瓶を何本も空けて、過食スイッチが入って、摂食障害行動が止められなくなりました。

他にも、ニコチン、薬物、脱法ハーブ、睡眠薬、下剤などの物質的な依存。買い物、盗癖、ネット、浮気、ギャンブルなどの行為的な依存。異性依存、恋愛依存、DV、ストーカーなど人間関係に関する依存など、様々な依存症があります。摂食障害を気合と根性で止めようとすると、他のことに依存する可能性がありますのでご注意ください。

不眠症

寝つきが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅いなどの症状があります。しっかりと眠れないため、日中に眠くなったり、注意が散漫になります。

私も、夜なかなか眠れませんでした。真夜中になって過食嘔吐すると、体は疲れているのに興奮状態で目が冴えてしまいます。眠ってしまいたいのに眠れず、慢性的な睡眠不足に陥りました。午前4時くらいにやっと眠れたのに、朝6時には仕事のために起きる生活。電車で貧血になったり、仕事中に集中力がなかったり、日常生活に支障をきたしていました。深夜の過食嘔吐が減ってくると、過食しなかった安心感で眠れるようになりました。無理に眠ろうとするより、まずは摂食障害改善を目指したほうがいいかもしれません。

摂食障害中の私は顔色が悪く、過度の飲酒と嘔吐のために顔面はむくみ、ボロボロの肌を隠すために厚化粧をしていました。目に覇気がなく、自分に自信がないので人と目を合わせて話せませんでした。顔面コンプレックスで鏡を見るのが憂鬱でたまりませんでした。それでも必死にお化粧直しをしている自分が残念でなりません。

髪の毛

髪の主成分はタンパク質です。栄養不足が続くと、薄毛抜け毛も当たり前です。私も薄毛には悩みました。ブラシで髪を梳かすとバサバサ抜けるので、あまりブラシを使わなくなりました。お風呂で頭を洗うと排水口にものすごい量の毛がたまるので、あまり頭を洗いませんでした。枕元や部屋に髪の毛が落ちていると、すぐにコロコロをしていました。髪を伸ばすと分け目が目立つし、髪の毛を短くするとフェイスラインが気になるし、ファッションウィッグも検討していました。きちんと食べるようになってから、薄毛に悩むことはありません。

過食嘔吐の方は、ひどい虫歯にご注意を。過食嘔吐では、食べ物と一緒に胃酸も出しています。胃酸は非常に強い酸性のため、歯のエナメル質を溶かしてしまいます。そのため、若い方でも歯がボロボロになってしまい総入れ歯の方もいます。

拒食の場合、水分摂取が足りなくて口内が乾いて唾液量が減ります。すると唾液がネバネバして口臭の原因に。とても細くて美しい女性でも、過酷なダイエットをしている方の中には、口臭が気になる人もいます。飢餓状態によるものなので、きちんと食事をすれば治ります。

嘔吐の後は…言うまでもありませんね。歯磨きでは決して誤魔化すことができない口臭です。

低血圧、冷え性は当たり前でした。常に体調不良で、気分がいい日なんてありませんでした。

貧血・低血圧・低体温

拒食も過食嘔吐も鉄分やビタミンB12、葉酸などが不足して貧血が起こりやすくなります。慢性的なエネルギー不足のため、活発な活動をすると、すぐに目眩が。夏は暑さにフラフラして、冬は寒さにガタガタしていました。しっかり食べるようになれば、ちゃんと改善します。摂食障害の頃は35度だった体温が、今では36.5度になり風邪をひきにくくなりました。

過食嘔吐を発見するには、手に吐きダコがあるかどうか?で判断をしていました。私は左手を突っ込んでいたので、歯が当たっていつも血が出ていました。普段は絆創膏を貼っていましたが、こんなところに貼るのはボクサーと過食嘔吐している人くらいだと思います。かなり傷付いていましたが、今では綺麗に治っています。

骨粗鬆症の恐れがあります。カルシウム不足や骨の再生を促す女性ホルモンが足りなくなると、骨がスカスカになってしまいます。骨量は月経が再開してから回復するそうなので、とても時間がかかることを覚えておいてください。

皮膚

過度の低体重や栄養不足が原因で、皮膚にも様々な異常が起きます。私が一番感じたのは、皮膚のハリがなくなりパサパサになることです。どんなにローションやオイルを塗っても肌がパサパサして、冬になると皮膚から粉が舞います。しっとりと滑らかな肌になるためには、食事内容が大切なんだと実感しました。

身長

若い頃から無理なダイエットや摂食障害行動をしていると、成長に必要な栄養が足りないため身長が伸びないことがあります。また、胸やおしりなど女性らしい丸いフォルムではなく、角ばったりペッタンコな造形になる方もいます。Tシャツを着ていると男のことを間違われる方もいます。

内臓

あらゆる内臓機能が低下します。

食道

食道炎、食道癌、逆流性食道炎の恐れがあります。特に過食嘔吐の場合は、胃酸の逆流によって食道を傷つけたり炎症を起こしやすくなります。炎症が悪化すると、食道炎を引き起こしたり、食道癌になる危険も。

摂食障害が治った今でも、逆流性食道炎で苦しい時があります。当時は無理に嘔吐していたのですが、今は吐きたくないのに逆流してしまいます。もっと時間が経てば治るのかもしれません。

心臓

嘔吐や下剤乱用による低カリウム血症で、不整脈を発症する可能性があります。

拒食の場合、粘膜が萎縮していまいます。過食の場合は、胃拡張になります。どちらも食事によって改善できます。

肝臓

栄養不足による肝機能障害を引き起こします。

腎臓

腎機能異常により、尿の排泄量が少なくなります。

膵臓

激しい腹痛や吐き気がある場合は、膵炎かもしれません。

子宮

月経不順、無月経、不妊の恐れがあります。低体重の場合、女性ホルモンの不足によって生理が不順になったり無月経になりやすくなります。

無月経を放置していると子宮や卵巣の萎縮を招いてしまい、将来の不妊の大きな原因のひとつとなってしまいます。「生理が来なくて楽ちん」などと軽く考えずに、早急な治療が必要です。

機能が低下すると、食べ物が腸を通過しにくくなります。機能が停止してしまうと自力で活動することができなくなります。摂食障害が治りかけの頃、激しい腹痛で緊急入院したことがあります。その時「胃腸が活動停止状態です。」と言われました。許可食しか食べなかったり、食べても消化吸収する前に吐き出してしまっていたので、胃腸がストライキを起こしてしまったのです。そのまま入院して一週間ほど点滴生活。ドロドロの粥しか食べずに3日ほど過ごし、やっと便が出ました。今まで腸を無視した生活をしていたことに大反省しました。

また、食べる量が少ないと便秘になりやすく、下剤乱用は正常な排泄が困難になります。ちゃんと食べて、自力で排泄する生活を目指してください。

まとめ

摂食障害は免疫力が低下して、あらゆる合併症を引き起こします。現時点で体の不調がある場合、治療が必要になることもあります。判断能力も低下しているので、自己判断せずに、専門の医療機関で相談してみてください。